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減らそうプラスチックの会

人工芝の問題はマイクロプラスチックだけではなかった

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人工芝の問題はマイクロプラスチックだけではなかった

 私が初めて見たのはお台場の砂浜で、緑色の破片がたくさんありました。それが人工芝でした。ピリカが2020年に国内水域で行った調査の結果、流出したマイクロプラスチックの約20%(個数比)が人工芝の破片であることが判明しました。さらに、人工芝の割合が50%を超える河川も複数存在すると報告されています。人工芝は、大きな運動施設に敷かれ、破片だけでなく、摩耗屑が外に緑の粉体として堆積しているところもあります。さらに、人工芝は、大きな球場などの運動施設だけでなく、小学校でも使用されています。最近では民家の庭や屋内にも人工芝が敷かれることもあるようです。

 人工芝が問題とされるのは、緑の葉の部分の破片が川や海岸に漂着し、その中には多くのマイクロプラスチックが含まれているからです。さらに、古いタイヤなどから作られたゴムチップが人工芝に充填材として使用され、これがマイクロプラスチックとして流出してしまうことも判明しています。

 アメリカの太平洋岸北西部では、雨が降ると大量のギンザケが死んでしまう事例がありました。後に分かったことですが、タイヤの摩耗片にはさまざまな有害化学物質が含まれており、特に老化防止材の一種である6PPDという化学物質が空気中の酸素と反応して6PPDキノンとなり、これがギンザケに対して特異的な毒性を持っていたことが判明しました。日本でもニジマスやニッコウイワナに対する毒性が確認されていますが、他の生物や人間に対する毒性はまだわかっていません。国立環境研究所によると、6PPDキノンは東京でも検出されています。古いタイヤのゴムチップには、有害な重金属や化学物質、揮発性有機化合物などが含まれており、生物や人体への危険性が懸念されています。

 さらに深刻なことに、アメリカでは人工芝の成形には分解が困難な有毒な有機フッ素化合物であるPFASが使用されています。人工芝の複雑な形状を作る際に、PFASが成形を容易にするために添加されているのです。さらに、人工芝用ゴムチップの充填材にもPFASが検出されています。この有害な化学物質は、がんや免疫系の損傷、発達障害など、さまざまな健康問題と関連しているとされています。日本でも使われている可能性があります。

 人工芝に有害なPFASが含まれているため、アメリカのボストン市では市長が新しい公園に人工芝を敷かないように指示したとの報告があります。ニューヨーク州では2023年末までに室内のカーペットの一部としての人工芝へのPFASの使用を禁止する予定です。

 一方、日本では人工芝から環境ホルモンの紫外線吸収剤UV-328、UV-P、UV-9やノニルフェノールが検出されています。前記の有害化学物質が、水に溶け出して地下水汚染したり、大気汚染したりすることが懸念されています。また、人工芝の摩耗屑が大気汚染する可能性もあります。

 欧州化学物質庁(ECHA)は人工芝の充填材として意図的に添加されるマイクロプラスチックに関する規制案を2020年に追加しました。この規制案では、人工芝用ゴムチップの充填材としてのマイクロプラスチックは、6年の移行期間を経て完全に禁止されることを推奨しています。後続の規制案では、販売期間が8年に延長されました。

 人工芝の処理と廃棄は非常に困難であり、多額の費用がかかるため、オランダでは処理できずに野積みされています。

 日本では小学校の校庭に人工芝が敷かれる事例も見られますが、これにより小学生が6年間にわたってPFASや環境ホルモンなどの有害物質を吸収する可能性があるため、深刻な懸念が存在します。

参考文献

ピリカ事業紹介~海洋プラスチック問題䛾最前線~

https://corp.pirika.org/x-shared-files/59dcbfbd-f5c5-46aa-aad3-f27c25d5d6ba

大阪府内の人工芝施設におけるマイクロプラスチック流出抑制に関するガイドライン Ver.1.0

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/35110/00406898/jinkoshiba_gl_1.0.pdf

Acute Toxicity of 6PPD-Quinone to Early Life Stage Juvenile Chinook (Oncorhynchus tshawytscha) and Coho (Oncorhynchus kisutch) Salmon

https://setac.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/etc.5568

Concentration and leachability of N-(1,3-dimethylbutyl)-N′-phenyl-p-phenylenediamine (6PPD) and its quinone transformation product (6PPD-Q) in road dust collected in Tokyo, Japan

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0269749122002962?vi

Per- and Polyfluoroalkyl Substance Toxicity and Human Health Review: Current State of Knowledge and Strategies for Informing Future Research

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7906952/

欧州化学物質庁、マイクロプラスチックの添加制限に向けて協議

https://tenbou.nies.go.jp/navi/metadata/106258

Rethink Plastic alliance welcomes the EU restriction of intentionally-added microplastics, urges faster implementation

Rethink Plastic
Rethink Plastic alliance welcomes EU restriction on microplastics - Rethink Plastic The Rethink Plastic alliance welcomes the restriction of intentionally-added microplastics in products but urges for faster implementation.

Microplastics

https://echa.europa.eu/hot-topics/microplastics

Boston bans artificial turf in parks due to toxic ‘forever chemicals’

https://www.theguardian.com/environment/2022/sep/30/boston-bans-artificial-turf-toxic-forever-chemicals-pfas

NEW YORK GOVERNOR SIGNS PFAS BANS IN APPAREL AND CARPET

https://www.cps.bureauveritas.com/newsroom/new-york-governor-signs-pfas-bans-apparel-and-carpet

高田秀重、プラスチックと環境ホルモン、子どものしあわせ2023年7月号、p.8-11;

坂根ら、プラスチック製品中のフェノール系内分泌攪乱物質の溶出、環境化学物質3学会合同大会要旨集、2022年p.555ー556

BNNVARA(オランダ公共放送),What happens to plastic and polluting artificial turf?

Playing With Pollution – Artificial Turf

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