ヒト子宮内膜におけるマイクロプラスチックの汚染と生殖健康へのリスク
マイクロプラスチック(MPs)は、人間の血液、胎盤、肝臓、心臓、男性の精巣などから検出されており、動物実験では健康への影響が明らかになっているものもあります。
北京大学第3病院の研究チームが発表した論文によると、22人の女性患者の子宮内膜組織を調べたところ、ヒトの子宮内膜は、主にポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの、2〜200μmの大きさのMPで汚染されていることがわかりました。1μmは1000分の1mmです。
マウスを使った実験では、MPsがどのようにして子宮に侵入するかが調べられました。マイクロメートルサイズの小さな粒子の場合、食べ物と一緒に体に入って血液を通じて子宮に到達します。一方、100μmに達する大きな粒子の場合、膣から子宮に移動する際に微小な通り道を使うことが分かりました。
MPsを静脈に注射した場合、マウスの子どもたちに生殖能力が低下し、性別の割合が異常になることが分かりました。また、MPsを飲み込ませてから3.5か月後に、マウスの子宮内膜に強い炎症が見られ、これが妊娠しにくくなる原因であることが、受精卵(胚)を子宮内に移植する実験で確認されました。
さらに、試験管でMPsを使って育てたヒト子宮内膜のミニチュアモデル(これはヒトの子宮内膜の一部の構造と機能を再現したものです)では、細胞が死ぬ反応(これはMPsが細胞にとって有害であることを示しています)と、成長が異常になる現象(これは組織や臓器の正常な機能を損ない、不妊症や子宮内膜症、子宮がんなどのリスクが増える可能性があります)が見られました。
論文では、これらの知見がヒトの子宮におけるMPの汚染と、生殖健康に対するその潜在的影響に関して重大な懸念を提起しているとまとめています。胎盤、精巣、子宮におけるマイクロプラスチックは、少子化に影響をもたらしている可能性が考えられます。できるだけプラスチックに依存しない生活が求められます。特に、ペットボトルとカップや弁当などのプラスチック容器は避けましょう。
参考文献
Features, Potential Invasion Pathways, and Reproductive Health Risks of Microplastics Detected in Human Uterus, Xunsi Qin et al. Environ. Sci. Technol. 2024, 58, 24, 10482–10493 https://doi.org/10.1021/acs.est.4c01541
Microplastic Contamination in Human Endometrium and Risks to Reproductive Health