人間の目に潜むマイクロプラスチック-硝子体液から衝撃の検出結果
1. マイクロプラスチックと健康への懸念
マイクロプラスチック(MPs)は、5mm以下のプラスチック粒子であり、さまざまな人間の生体試料から検出されることで健康への懸念が高まっています。しかし、環境や人体におけるマイクロプラスチックの存在についての研究が進む一方で、人間の目という閉ざされた環境内での影響は、ほとんど明らかにされていません。
2. 研究概要:対象と方法
2024年に発表された研究では、2つの医療施設において、4つの目の疾患(黄斑円孔、黄斑前膜、網膜症、裂孔原性網膜剥離)を持つ患者49名を対象に調査が行われました。
採取した硝子体液サンプルを最適化した方法で処理した後、レーザーダイレクト赤外線(LD-IR)分光法および熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)を用いて、硝子体内のマイクロプラスチックの特性を分析しました。
3. 硝子体液内のマイクロプラスチックの検出結果
その結果、49人分の硝子体液(水晶体と網膜の間に存在する液体)サンプルの合計から8,543個の粒子がLD-IRで検出され、そのうち1,745個がプラスチック粒子であると判明しました。これらの粒子の多くは、50μm以下の微小サイズでした。
4. マイクロプラスチックの種類と健康指標との相関
さらに、49の個別サンプルを用いたPy-GC/MS分析によって、この結果が裏付けられました。最も多く検出されたのはナイロン66で、次いでポリ塩化ビニル(PVC)やポリスチレンが確認されました。
特に、マイクロプラスチックのレベルと眼圧や眼房水(角膜と水晶体の間に存在する液体)の濁りといった重要な眼の健康指標との間に相関が見られました。また、網膜症を患っている人は、マイクロプラスチックに関連した眼の健康リスクの高まりを示しました。
5. 別の研究
別の研究では、コンタクトレンズが90日分の太陽光に相当する日数さらされると、排出されるマイクロプラスチックの量が徐々に増加することが観察されています。さらに、人口涙液や目薬からもマイクロプラスチックが検出されています。また、室内空気中に漂うマイクロプラスチックが目の表面に付着する可能性も指摘されています。
6.さらなる研究の必要性
これらの発見は、マイクロプラスチックが目に与える新たな健康リスクを示唆しており、さらなる研究の必要性を強調しています。
参考文献
Revealing new insights: Two-center evidence of microplastics in human vitreous humor and their implications for ocular health
https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2024.171109
Yuxuan Liu et al, High-Content Screening Discovers Microplastics Released by Contact Lenses under Sunlight, Environmental Science & Technology (2023). DOI: 10.1021/acs.est.3c01601
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37267077
Study Reveals Contact Lenses Can Shed Microplastics, Raising Health Concerns
Microplastics Identified in Commercial Over-the-counter Lubricant Eyedrops
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2024.05.26.24307941v1.full
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