掃除用メラミンスポンジから出るマイクロプラスチック繊維
環境科学分野で最も信頼できる査読付きの論文誌に掲載された論文を紹介します。
1. 背景:合成繊維とマイクロプラスチック汚染
合成繊維が摩耗すると、環境中にマイクロプラスチック繊維(MPF)が放出されます。これは汚染の主要な原因のひとつです。
しかし、掃除用に作られたメラミンスポンジが日常使用でどの程度MPFを出すのかは、これまで明らかではありませんでした。
2. 研究方法:スポンジと金属表面の摩耗実験
本研究では、メラミンスポンジを対象にしました。
・スポンジの内部構造(支柱の密度)を変える
・こすりつける金属表面の粗さを変える
・往復式摩耗試験機を用いて、こすり動作を再現する
これらの条件で摩耗の様子を調べました。
3. 結果:発生したマイクロプラスチックの特徴
スポンジが摩耗すると、ポリ(メラミン-ホルムアルデヒド)という種類のプラスチックからできた繊維状のマイクロプラスチックが発生しました。
・形態:線状または枝分かれした繊維
・大きさ:長さ10〜405μm(髪の毛の太さは約70μm)
・発生メカニズム:摩擦による支柱の変形・破断と、プラスチックの分解
4. 発生量と影響の大きさ
金属表面が粗いほど、またスポンジの支柱が密なほど、多くのマイクロプラスチックが発生しました。
・最大で1グラムのスポンジから650万本の繊維が放出されました。
・世界全体では年間約4.9兆本が環境中に放出されている可能性があります。
5. 意義と今後の課題
この研究は、掃除用スポンジがこれまで見過ごされてきた新たなマイクロプラスチック汚染源であることを示しました。
今後は、私たちがどの程度これらにさらされているのか、健康や環境へのリスクを評価する必要があります。
■対策として考えられる代替品
マイクロプラスチックの発生を減らすためには、以下のような代替品の利用が考えられます。
・天然素材のスポンジ:セルロース(植物由来繊維)やヘチマやタワシなど、生分解性のある素材を使ったスポ
ンジなど。
・布やタオル:綿や麻などの天然繊維でできた布を掃除に使う。
・再利用可能なブラシ:竹や金属など、摩耗してもマイクロプラスチックを出さない素材のブラシ。
これらを使うことで、日常生活の中でのマイクロプラスチック排出を少しずつ減らすことができます。
参考文献
Mechanochemical Formation of Poly(melamine-formaldehyde) Microplastic Fibers During Abrasion of Cleaning Sponges, Yu SuChenqi, YangSongfeng, WangHuimin, LiYiyu, WuBaoshan, Xing*Rong Ji, Environmental Science & Technology, Vol 58/Issue 24, June 6, 2024

