最新研究で判明:市販のペットボトルの水に含まれるナノ・マイクロプラスチックの人体影響
-ペットボトルの水、妊婦や子どもに飲ませても大丈夫?-
環境科学・化学分野で非常に信頼性の高い国際学術誌に掲載されたレビュー論文を紹介します。
はじめに:なぜこの研究が必要なのか
ペットボトルは便利で、世界中で広く使われています。しかし、使い捨てのペットボトルからは、目に見えないほど小さなプラスチック(ナノプラスチックやマイクロプラスチック)が水の中に溶け出していることが分かってきました。これらの微細プラスチックが、私たちの体にどんな影響を与えるのかを調べたのがこの論文です。
微細プラスチックとは?
- マイクロプラスチック:直径が5ミリ以下の小さなプラスチック。
- ナノプラスチック:さらに小さく、1マイクロメートル(1000ナノメートル)未満。髪の毛の太さの数百分の一。
※注:ナノサイズになると、細胞や臓器のバリアを通過できる可能性が高まります。
これらは、ペットボトルの製造・充填・輸送・保存の過程で、摩擦や熱などで発生します。キャップの開閉やボトルの変形も原因の一つとされています。
どこから体に入るの?
ペットボトルの水を飲むことで、微細プラスチックが体内に入る可能性があります。特に、長時間保存された水や高温にさらされたボトルでは、より多くの微細プラスチックが検出されています。
体への影響:何が問題なのか?
研究では、以下のような健康リスクが指摘されています。
- 炎症や免疫反応:微細プラスチックが体内に入ると、免疫細胞が異物として反応し、炎症を起こす可能性があります。
- 酸化ストレス=細胞が傷つきやすくなること:細胞がダメージを受けやすくなり、老化や病気の原因になることがあります。
- ホルモンかく乱=体の成長や代謝に関わる仕組みが乱れること:プラスチックに含まれる添加物が、体のホルモンバランスを乱す可能性があります。
- 腸内環境の変化:腸内細菌のバランスが崩れ、消化や免疫に影響することがあります。
※注釈:これらの影響は、動物実験や細胞実験で確認されており、人間への影響はまだ研究途中です。
特に注意が必要な人は?
- 妊婦や子ども:発達中の体は影響を受けやすい可能性があります。
- 慢性疾患を持つ人:免疫が弱っていると、微細プラスチックの影響を受けやすくなるかもしれません。
どうすればリスクを減らせる?
- できるだけステンレスボトルやガラス瓶などを使う。
- ペットボトルの水を長時間保存しない。
- 高温になる場所(車内など)に置かない。
結論:これからの課題
この論文は、ペットボトルに含まれる微細プラスチックが、私たちの健康に長期的な影響を与える可能性があることを警告しています。今後は、人間への影響をより詳しく調べること、そして安全な容器の使用を広めることが重要です。
私たち一人ひとりが容器の選び方を工夫することも、未来の健康を守る第一歩になります。
文献
Sarah Sajedi, Chunjiang An, Zhi Chen, Unveiling the hidden chronic health risks of nano- and microplastics in single-use plastic water bottles: A review, Journal of Hazardous Materials. Volume 495, 5 September 2025, 138948. https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2025.138948
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389425018643

