点滴バッグからナノプラスチック検出 ― 数万個が体内に? 最新研究の警告
要点
この論文は「病院で使われる点滴バッグやチューブから、目に見えないほど小さなナノプラスチックが出ている」という新しい研究結果を報告しています。点滴は血管に直接入るため、体内への影響が懸念され、今後の調査が急務とされています。
点滴からもプラスチックが?
近年、海や土壌だけでなく、人の体内からも「マイクロプラスチック」が見つかっています。今回の研究はさらに小さな「ナノプラスチック」に注目しました。ナノプラスチックは1ミリの1000分の1以下の大きさで、細胞や血管に入り込みやすいと考えられています。
病院の点滴製品を調査
研究チームは、中国の病院で使われている複数のブランドの点滴バッグやチューブを調べました。特殊な顕微鏡とラマン分光法という分析技術を組み合わせることで、これまで見逃されていたナノプラスチックを検出しました。
どんな種類が見つかったのか
検出されたプラスチックは以下のように多様でした:
- ポリプロピレン(PP)
- 塩化ビニル(PVC)
- ポリスチレン(PS)
- ポリエチレンテレフタレート(PET)
- ポリアミド(ナイロン)
- ポリエチレン(PE)
- アクリル樹脂(PMMA)
特に PPとPVCのナノプラスチックが高濃度で見つかり、1つのバッグから数千〜1万以上の粒子が検出されました。
なぜ問題なのか
点滴は血管に直接入るため、ナノプラスチックが体内に取り込まれる可能性があります。これまで「環境から体に入る」と考えられていたプラスチックが、医療行為を通じても入ってしまうことが示されたのです。
研究者は「ナノプラスチックの種類と量がこれほど多様に確認されたのは初めてで、健康への影響を調べる必要がある」と警告しています。
今後の課題
- より小さいサイズのナノプラスチック(200nm未満)は今回の方法では検出できなかったため、さらなる技術開発が必要。
- 実際に人体にどのような影響を与えるかはまだ不明。
- 医療用プラスチック製品の安全性評価を強化する必要がある。
注釈
- ナノプラスチック:1µm以下の極小プラスチック粒子。細胞膜を通過する可能性がある。
- ラマン分光法:物質の分子構造を光で調べる分析方法。プラスチックの種類を特定できる。
まとめ
この研究は「点滴という医療行為を通じて、私たちが知らないうちにナノプラスチックを体に取り込んでいる可能性」を示しました。環境問題だけでなく、医療の安全性の観点からも、プラスチックの使用を見直す必要があることを強く訴えています。
文献
Licheng Wang, Jing Peng, William Ji, Muhammad Ali Tahir, Jilun Wang, Tao Wang, Meiling Weng, Liwu Zhang, (2025) Nanoplastics in infusion system remains underexplored: Evidence from detected nanoplastics in hospital-sourced infusion products. Journal of Hazardous Materials. Volume 499, 140136.

