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減らそうプラスチックの会

市販の生理用ナプキンの安全性評価

生理用ナプキン
目次

―細胞毒性、揮発性有機化合物(VOC)、およびマイクロプラスチック放出―

高い信頼性のある論文誌に掲載されたハワイ大学と韓国の大学の研究者の論文を紹介します。

調査の目的

この研究では、市販されている29種類の生理用ナプキンについて、以下の3つの観点から安全性を評価しました:

1.ナプキンから空気中に放出される化学物質(揮発性有機化合物=VOC)の種類と量

2.ナプキンから出る微細なプラスチック(マイクロプラスチック)の数と素材

3.ナプキンの成分が細胞に与える影響(細胞毒性)

さらに、これらの物質が使用者の健康にどの程度影響するかを、モデルを使って推定しました。

調査方法の概要

• VOCの測定:ガスクロマトグラフィー-質量分析法という精密な機器を使って、ナプキンから放出される10種類のVOCを調べました。

•マイクロプラスチックの定量:ナプキンを水に浸して、そこから出てくる微細なプラスチック粒子を数えました。

•細胞毒性試験:哺乳類の培養細胞を使い、ナプキンの抽出液にさらす方法と、ナプキンを直接接触させる方法の両方で、細胞の生存率を測定しました。

•曝露モデル:実際の使用状況を想定し、ナプキンから放出されるトルエンの量が健康基準を超えるかどうかを評価しました。

主な結果

•VOC(揮発性有機化合物)

検出されたVOCは「トルエン」のみで、29製品中28製品(約97%)から検出されました。量は1枚あたり0.04〜2.79マイクログラムで、健康基準(カリフォルニア州労働安全衛生局の許容曝露限界:37 mg/m³)を大きく下回っていました。

•マイクロプラスチックの放出

すべての製品からポリプロピレン製のマイクロプラスチックが検出され、1枚あたり6〜115粒子の範囲でした。現在、マイクロプラスチックの曝露に関する明確な安全基準は存在していません。

•細胞毒性(細胞への影響)

多くの製品で、細胞の生存率が中程度に低下しました。具体的には、対照群と比べて中央値で39%の減少が見られました。これは、ナプキンから何らかの生物活性物質(細胞に影響を与える成分)が溶け出している可能性を示唆しています。

一方で、細胞代謝に影響を与えなかった4製品は、いずれも表面に「オーガニックコットン」の表示がありました。

考察と提言

•トルエンの量は健康基準を下回っており、現時点ではVOCによる健康リスクは低いと考えられます。

•しかし、マイクロプラスチックの放出や細胞毒性の結果からは、長期間の使用による影響についてさらなる調査が必要です。

•特に、肌に密着する製品であることから、成分の透明性を高めることが重要です。

•製品表示において、使用素材や化学成分についての明確な情報提供が求められます。

参考文献

Safety assessment of commercial sanitary pads: Cytotoxicity, volatile organic compounds, and microplastics release, Noah P. Germolus, Se-Na Kim, Juhee Kim, Chun Gwon Park, Journal of Hazardous Materials, Volume 497, 5 October 2025, 139702, https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2025.139702

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