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減らそうプラスチックの会

生分解性プラスチックでも危険?ポリ乳酸微小プラスチックが腸内細菌を変え、肝臓に悪影響

腸肝相関
目次

要点:

この研究は「生分解性プラスチック=安全」とは限らないことを示しています。ポリ乳酸(PLA)由来の微小プラスチックが腸内細菌を変化させ、尿酸を増やし、結果として肝臓に脂肪がたまり炎症や線維化を引き起こす可能性があることが明らかになりました。

背景:生分解性でも微小プラスチックは発生する

近年、環境にやさしい代替品として「生分解性プラスチック」が注目されています。ポリ乳酸(PLA)はその代表例で、使用後に自然に分解されると期待されています。しかし、分解には時間がかかり、途中で微小プラスチック(MPs)が発生します。これらが環境中に広がり、私たちの体に入る可能性があるのです。

研究の目的:PLA由来の微小プラスチックが肝臓に与える影響を調べる

この研究では、PLAの微小プラスチックが腸で分解された後、肝臓にどのような影響を与えるかを調べました。特に、腸内細菌や尿酸の代謝が関係しているかどうかに注目しました。

方法:マウスを使った28日間の実験

研究チームは、PLAの「ポリマー型(未分解)」と「オリゴマー型(部分的に分解された状態)」の微小プラスチックをマウスに28日間与えました。その後、肝臓や腸の状態、血液中の成分などを詳しく調べました。

結果①:肝臓に炎症と脂肪の蓄積が起きた

PLA微小プラスチックを摂取したマウスでは、肝臓に炎症や線維化(硬くなる変化)が見られました。特にポリマー型の方が強い影響を与えていました。また、肝臓に脂肪(中性脂肪)がたまり、肝機能の指標であるALTやASTも上昇していました。

結果②:腸内細菌の変化が尿酸を増やし、肝臓に影響

PLA微小プラスチックは腸内細菌のバランスを変え、特定の菌(バチルス目)が増加しました。これにより腸で尿酸が多く作られ、血液を通じて肝臓に届き、脂肪の蓄積を促す遺伝子(Hsd17b13)が活性化されました。

注釈:
尿酸は通常、体の代謝で生じる物質ですが、過剰になると痛風や腎臓病だけでなく、肝臓にも悪影響を及ぼすことが知られています。

結果③:腸内細菌を除去すると肝臓のダメージが軽減

抗生物質で腸内細菌を除去したマウスでは、PLA微小プラスチックによる肝臓の炎症や脂肪蓄積が起きませんでした。これは、腸内細菌が肝臓への影響の「仲介役」になっていることを示しています。

結論:PLA微小プラスチックの肝臓への影響は「腸内細菌と尿酸」が鍵

この研究は、PLA微小プラスチックが直接肝臓を傷つけるのではなく、腸内細菌を通じて尿酸を増やし、肝臓に脂肪をため込ませることでダメージを与えることを示しました(腸肝相関)。生分解性プラスチックであっても、分解途中で生じる微小プラスチックが体に悪影響を及ぼす可能性があるため、使用や規制には慎重な検討が必要です。

文献

Yanhong Deng, Zhiming Li, Yuji Huang, Yizhou Zhong, Aiqin Qiu, Xiaoqing Chen, Xiyun Huang, Xiaohong Yang, Yu Feng, Ruobing Bai, Bingchi Fan, Hongyi Xian, Hao Li, Da Chen, Boxuan Liang, Zhenlie Huang, (2025) Hepatotoxicity induced by polylactic acid microplastics: The mediating role of gut microbiota and uric acid metabolism, Journal of Advanced Research

https://doi.org/10.1016/j.jare.2025.08.055

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