大気中のマイクロプラスチック
マイクロプラスチックとは5mm以下のプラスチックです。大気中のマイクロプラスチックは現在、室内外の大気中にあることが知られています。
最初に大気中マイクロプラスチックを検出したのは、フランスの国立研究機関の科学者たちで、フランスのピレネー山脈で繊維と断片の形状のマイクロプラスチックでした。
その後、ロンドン、上海、北京、カリフォルニア、富士山山頂、新宿、カンボジアのシェリムアップなどでも検出されています。マイクロプラスチックは長距離移動し、地球上を渦巻いています。
発生源としては、米国西部の大気中のマイクロプラスチックは、主に道路(84%)、海洋(11%)、農業用土壌粉塵(5%)などの二次再放出源に由来することが示唆されています。道路では、道路粉塵、タイヤの摩耗片やブレーキ粉塵、道路標示塗料の摩耗片などが考えられます。また、道路に堆積した粉塵が風で舞い上がることもあります。海洋のマイクロプラスチックが大気に移行していると考えられています。産業活動でもマイクロプラスチックが発生し、大気中に放出される可能性があります。下水道で除去されたマイクロプラスチックは下水汚泥に含まれ、それを堆肥化して農地に施用すると、農業用土壌を汚染し、農作物を汚染するだけでなく、大気中マイクロプラスチックの発生源にもなります。
大気中のマイクロプラスチックの特性(存在量、形状、色、ポリマーの種類など)は次の通りです。マイクロプラスチックは、都市部から遠隔地まで大気中に存在し、その存在量/堆積量は、異なる場所で1〜3桁に及んでいます。繊維と断片が最も多く報告される形状でですが、フィルムもあります。プラスチックの種類は、生産量と同様に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコン樹脂などがあります。色は、赤、オレンジ、黄色、白、グレー、青、緑の透明、黒など、さまざまな色をしていることがあります。
家庭での発生源としては、私たちの衣類やカーペットがこすれて繊維が室内に放出されます。さらに、衣類の乾燥機からマイクロファイバーが外気に放出されます。また、柔軟剤に入っている香りのマイクロカプセルもマイクロプラスチックで、吸入する可能性があります。人工芝の葉の破片や充填材もマイクロプラスチックの発生源の可能性があります。
大気中には多数の小さいマイクロプラスチックがあるため、それらに暴露されると、摂取、代謝、生殖に影響を及ぼすと考えられています。大気中の4μm以下のマイクロプラスチックを人間が吸入することにより、肺胞まで到達して、酸化ストレスや炎症性障害などの健康被害を引き起こす可能性があります。さらに、大気中のマイクロプラスチックは、重金属や他の有害な化学汚染物質の運び屋としても機能する可能性もあります。
大気中のマイクロプラスチックは、人の肺や野鳥の肺から検出されています。このような状況から、マイクロプラスチックの放出を抑えるために、個人や企業が取り組むことが求められています。また、大気中マイクロプラスチックに関する研究の進展も必要不可欠です。
大気中マイクロプラスチックの摂取を避ける方法としては、人が肺から摂取するマイクロプラスチックは室内が多いと考えられ、掃除機で頻繁に掃除することが有効との論文もあります。また、空気清浄機も有効と考えられます。
参考文献:
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第16回成果報告会2007年-2020年富士山測候所で行った活動の成果 講演予稿集p.9-10,
大河内博他,大気中マイクロプラスチック研究の現状と健康および地球環境影響
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Microplastics study shows Australia may be over-carpeted