頸動脈プラーク内のマイクロプラスチックの存在が、心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合リスクを4.5倍超に
これまでの研究で、血液中や心臓の組織、臓器、血管のプラークなどからマイクロプラスチックが検出されています。
イタリアの研究チームは、無症状の頸動脈疾患に対する頸動脈内膜剝離術を施行予定の患者を対象とした多施設共同の前向き観察研究を行いました。頸動脈内膜剥離術とは首の太い動脈である頸動脈の狭窄及び塞栓形成の原因であるプラーク、つまりコレステロールや中性脂肪などの脂質が動脈血管内に蓄積したものを外科的に切除する治療法です。この前向き観察とは、未来に向かって観察していくという追跡調査のことです。頸動脈のプラーク除去手術を受けた患者から採取した検体を用いて、種々の方法でマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)の存在を分析しました。
主要評価項目は、心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合リスクとし、プラーク内にMNPsの存在が確認された患者と確認されなかった患者を比較しました。
研究の結果、257例が平均34か月の追跡調査を完了し、150例の頸動脈プラークからポリエチレンが検出されました。また、31例ではポリ塩化ビニルも測定可能な量で検出されました。電子顕微鏡検査では、ギザギザの形状をした異物粒子がプラークのマクロファージ内に存在し、マクロファージ外にはデブリ(破片や残骸)として散在していることが確認されました。マクロファージ内にギザギザの異物粒子が存在するのは免疫細胞のマクロファージが異物のMNPsを取り込んで食べた結果と考えられます。
プラーク内にMNPsが検出された患者は、検出されなかった患者に比べて、心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合リスクが4.53倍高いという結果が示されました。
この研究では、頸動脈プラーク内にMNPsが検出された患者は、検出されなかった患者に比べて、追跡期間34か月の時点で、心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合リスクに、高い関連性が示されましたが、因果関係を証明したものではありません。
今後、さらなる研究が必要であるとともに、プラスチックに依存しない生活への取り組みが求められます。
参考文献
Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events, R. Marfella et al.
Published March 6, 2024 N Engl J Med 2024;390:900-910,DOI: 10.1056/NEJMoa2309822,
VOL. 390 NO. 10