マイクロプラスチックが人間の鼻から脳に浸透することが判明
マイクロプラスチックとは:5mm以下のプラスチックを指します。1マイクロメートル(1μm)は1ミリメートルの1000分の1の大きさです。これまでの研究で、マイクロプラスチックやナノプラスチックが人間の血液や臓器などから検出されています。なお、1ナノメートル(1nm)は1マイクロメートルの1000分の1です。
サンパウロ大学の研究概要:サンパウロ大学の研究チームによる査読付き論文では、鼻腔の上部にある嗅覚を感じる部分(嗅覚上皮)の上にある脳の嗅球(きゅうきゅう;嗅覚の中枢)について調査が行われました。15人の遺体の嗅球からサンプルを採取した結果、15人中8人の嗅球から、包装や衣服、家庭用品など、日常的に使用されている製品由来の16種類の合成ポリマー粒子(マイクロプラスチック)が検出されました。
調査結果の詳細:死亡した15人中8人から合計16個の合成ポリマー粒子および繊維が確認され、嗅球あたり1~4個のマイクロプラスチックが含まれていました。このうち75%が粒子で、その83.4%が断片状、16.6%が球状でした。25%は繊維(長さと幅の比が3を超えたもの)でした。粒子の平均長さは12.1μm、範囲は5.5~26.4μm、平均幅は8.9μm、範囲は3.0~25.4μmでした。繊維の平均長さは21.4μm、範囲は19.0~24.5μm、平均幅は3.8μm、範囲は3.0~6.0μmでした。
検出されたプラスチックの種類:ポリプロピレンが最も多く(43.8%)、次いでポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン酢酸ビニル(12.5%)が続きました。その他、ポリエチレン、ペルロン・ポリアミド(ナイロン6繊維)、ウール・ポリプロピレンがそれぞれ6.3%含まれていました。また、これらのマイクロプラスチック粒子と繊維は風化の兆候を示していました。
ナノプラスチックの可能性:この研究では、マイクロプラスチックに焦点を当てていますが、さらに小さいナノプラスチックも嗅球に多く存在している可能性があります。
マイクロプラスチックの体内移動経路:この研究の意義は、マイクロプラスチックが呼吸を通じて体内に入り、肺から血流に乗って血液脳関門を通過して脳に達するルートと、鼻から直接脳の嗅球に達するルートの2つの経路があることを示した点です。
室内環境が主な発生源:嗅球で検出されたマイクロプラスチックは、包装材や衣服、カーテン、クッション、テーブルクロス、装飾品、カーペットなどに使用されるポリプロピレン、ナイロン/ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレン酢酸ビニルなどの合成プラスチックに対応しており、室内環境が吸入されるマイクロプラスチックの主な発生源であることが示唆されています。
プラスチック依存を減らす対策:室内の空気を汚染するプラスチックを減らすために、包装材や衣服、カーテン、クッション、テーブルクロス、装飾品、カーペット、スリッパなどに天然素材を使用して、合成繊維やプラスチックを避けること、また、毎日掃除機をかけることが推奨されます。プラスチックに依存しない生活を心がけましょう。
参考文献
Microplastics in the Olfactory Bulb of the Human Brain
Luís Fernando Amato-Lourenço, PhD1,2; Katia Cristina Dantas, PhD2; Gabriel Ribeiro Júnior, PhD2; et al
JAMA Netw Open. 2024;7(9):e2440018. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.40018
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2823787