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減らそうプラスチックの会

マイクロプラスチックが光合成を止める:世界の食料生産に迫る新たな脅威

目次

 アメリカ合衆国科学アカデミー(NAS)が発行している世界的に非常に権威のある査読付きの学術雑誌PNASに掲載された論文を紹介します。

研究の目的と意義

 この研究は、マイクロプラスチック(5mm以下のプラスチックの粒)が地球上の植物や藻類にどのような影響を与え、ひいては私たちの食料供給にどれだけ影響するかを、世界規模で調べたものです。
 研究者たちは3,286件の観察データを使って、マイクロプラスチックがさまざまな自然環境で植物の光合成(植物が光を使って成長するための重要な仕組み)をどれほど妨げているかを分析しました。

主な結果と影響

その結果、以下のことがわかりました。

  • 陸の植物や海・川の藻類では、光合成が7~12%も減ってしまう可能性があることがわかりました。
  • 光合成の低下により、世界の農作物の年間生産量が約1億トンから最大で3億6千万トン、水産物では年間約1億5千万トンから34億2千万トンの炭素に相当する正味一次生産量も減ってしまうと推定されています。
  • 光合成を行う生き物の中にある「クロロフィル」(光を吸収してエネルギーに変える物質)も、11~13%ほど減ってしまう可能性があります。

対策の可能性

 ただし、環境中に存在するマイクロプラスチックを世界全体で13%ほど減らすことができれば、次のような効果が見込めます:

  • 光合成の損失を約30%減らすことができる
  • 農作物の生産の世界的な損失を年間で約22百万トンから最大で116百万トン、水産物では約0.3百万トンから7百万トン減らすことができる

結論

 この研究から、マイクロプラスチックが植物の成長に悪影響を与え、それが食料不足につながる可能性があることが明らかになりました。そして、プラスチックを減らすことが、世界の食料を守るためにも非常に重要であるということがわかりました。今後のプラスチック対策は、環境のためだけでなく、人間の食生活や安全のためにも早急に取り組むべき課題です。

 なお、今後は現場観測や長期的な研究の蓄積が不可欠です。

参考文献

Wang, Chenyang, Chen, Yuxuan, Zhao, Xinyue, Li, Haixing. Global estimates of photosynthesis loss under microplastic pollution. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 121, e2423957122 (2024).

https://doi.org/10.1073/pnas.2423957122

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