プラスチック問題の気づき
- プラスチックの散乱状況
- マイクロプラスチックで判ってきたこと
- リサイクルについて
海岸漂着プラスチックごみ
河原のプラスチックごみ
○プラスチックは、安く、軽く、錆びず、丈夫で寿命が長いので、生活のあらゆる面で多用されてきました。
○海岸や河原にプラスチックごみが沢山打ち上げられていることに気づきました。
年間800万トンのプラスチックが海に流れ込む
ージェナ・ジャンベック/ジョージア大学他 1)
2050年にはプラスチックは海の魚の重量より多くなると予想されています。2)
参考文献
1) https://news.uga.edu/new-science-paper-magnitude-plastic-waste-going-into-ocean-0215/
2) More Plastic than Fish in the Ocean by 2050: Report Offers Blueprint for Change
海岸のマイクロプラスチック
河原のマイクロプラスチック
マイクロプラスチックとは何?
マイクロプラスチックは5mm以下のプラスチックです。1)
海岸や河原でマイクロプラスチックが見つかりました。海や川や湖に漂っていることが分かりました。
マイクロプラスチックはどうしてできるのでしょうか?
(1)一次マイクロプラスチック(初めから5mm以下で作られたマイクロプラスチック)
レジンペレット(プラスチック製品の原料)、マイクロビーズ(口紅、ファンデーションなどの化粧品、クッションやぬいぐるみの充填物)、ラメ、柔軟剤の香料のマイクロカプセル、被覆肥料の殻(肥料カプセル)などがあります。
(2)二次マイクロプラスチック(元は大きなプラスチック)
街や農地や河原や浜辺や海の中や大気中で、プラスチック製品が太陽の紫外線と熱と酸素で劣化し、波や風などの力で壊れ小さくなりできます。
プラスチックのスポンジ等が使用中にこすられて小さくちぎれてマイクロプラスチックになります。合成繊維などでできた衣類を洗たくしたとき、繊維が放出されて、マイクロプラスチック(マイクロプラスチックファイバー)になります。タイヤの摩耗塵や道路標識塗料からのマイクロプラスチックもあります。(摩耗からできたMPは一次にすることが多い)
マイクロプラスチックの問題
マイクロプラスチックは、有害化学物質が入っていることがあり、海の中で有害化学物質を吸着します。有害化学物質の運び屋になります。また、小さくなると粒子毒性が考えられます。
参考文献
1)国連の海洋汚染の専門家会議(GESAMP)の定義。
SOURCES, FATE AND EFFECTS OF MICROPLASTICS IN THE MARINE ENVIRONMENT
http://www.gesamp.org/publications/reports-and-studies-no-90
陸上のマイクロプラスチック
道路標識塗料やタイヤの摩耗塵のマイクロプラスチックが川や大気へ行っていることが分かりました。
塗料は、川や海へのマイクロプラスチック漏出の最大の原因(1.9Mt/年)となっており、他のすべてのマイクロプラスチック漏出源(例:繊維やタイヤの塵)を上回っています。1)
参考文献
1)Plastic Paints the Environment
https://www.e-a.earth/plasticpaintstheenvironment
大気のマイクロプラスチック
大気中にマイクロプラスチックが見つかりました。1)
室内でも化学繊維などが空気中に漂っていることが分かりました。1)
陸上や海のマイクロプラスチックが大気に行っています。大気中でも大きなプラスチックがマイクロプラスチックになります。
マイクロプラスチックは空気動力学粒径の4μm以下では肺胞に到達します。2)
参考文献
1)Microplastics as an emerging source of particulate air pollution: A critical review
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304389421012097
2)作業環境中の粉じん測定とばく露対策
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2017/pdf_109/siryou_5.pdf
マイクロプラスチックは地球を循環
陸上、海岸、海の中、大気中でもプラスチックがMPになります。
MPは川や大気から海へ
海から大気へMPが移行
陸上のMP→大気や川へ
富士山の山頂の大気でMPを検出1),2)
新宿の大気でもMPを検出2)
家庭排水中のMPが下水道へ
下水道の汚泥にMP→農地還元→大気
注)MPはマイクロプラスチックの略称です。
参考文献
Constraining the atmospheric limb of the plastic cycle
https://doi.org/10.1073/pnas.202071911
1)第16回成果報告会2007年-2020年富士山測候所で行った活動の成果 講演予稿集p.9-10,
大河内博他,富士山頂でPM2.5,雲,雪からマイクロプラスチックを発見!
2)Airborne microplastics being studied by Japanese researchers
大河内博他,大気中マイクロプラスチック研究の現状と健康および地球環境影響
https://www.env.go.jp/content/900539235.pdf
人間の血液中からマイクロプラスチックが検出される
人間の血液から検出
人間の肺から検出
人間の胎盤から検出
人間の肝臓から検出
魚介から検出
海鳥の消化管・肺から検出
家畜からも検出
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生態系への影響に懸念
参考文献
1) Heather A.Leslie,Discovery and quantification of plastic particle pollution in human blood,
https://doi.org/10.1016/j.envint.2022.107199
2) Detection of microplastics in human lung tissue using μFTIR spectroscopy,
https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2022.154907
3) Plasticenta: First evidence of microplastics in human placenta,
https://doi.org/10.1016/j.envint.2020.106274
4) Microplastics detected in cirrhotic liver tissue,
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35835713/
5) Quantitative Analysis of Selected Plastics in High-Commercial-Value Australian Seafood by Pyrolysis Gas Chromatography Mass Spectrometry
https://doi.org/10.1021/acs.est.0c02337
6) Microplastic in northern anchovies (Engraulis mordax) and common murres (Uria aalge) from the Monterey Bay, California USA – Insights into prevalence, composition, and estrogenic activity
https://doi.org/10.1016/j.envpol.2022.120548
7) Airborne microplastics detected in the lungs of wild birds in Japan
https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2023.138032
8) Plastic Particles in Livestock Feed, Milk, Meat and Blood (Final-Report),
プラスチック添加剤などの問題
プラスチックには、触媒、モノマー(単量体)、オリゴマー(単量体がいくつかつながったもの)、副反応生成物、分解物、不純物、添加剤(入っていない場合もある)が入っている可能性があります。1)添加剤を入れなくても、プラスチックには化学物質が入っていて、有害な化学物質がある可能性もあります。1)また、添加剤には有害な化学物質もあります。したがって、プラスチックは、人の健康を脅かす内分泌かく乱化学物質(EDC)を含む有害な化学物質を含有・溶出します。7)、8)、9)、10)
プラスチックは、熱と光(紫外線)に弱いもので、酸化されたり、高分子鎖が切断されたりします。また、未反応のモノマーが残っているので、それが高分子鎖を架橋し、脆くなります。また、石油で作られているので、燃えやすいのです。それで、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などが添加されます。帯電しやすいので、帯電防止剤が添加されることもあります。更に性能を変えるため、半透明のポリプロピレンに透明化剤を加えることもあります。ポリ塩化ビニルは硬く脆い樹脂のため、可塑剤を加えて、様々な柔らかさにします。3)、4)、5)
参考文献
1)食品用ペットボトルから溶出する化学物質の 摂取量の推定に関する研究
https://www.fsc.go.jp/chousa/kenkyu/kenkyu_happyo.data/30_kenkyu_happyo_1603.pdf
2)https://ipen.org/sites/default/files/documents/ipen-plastics_booklet-finalspreads.pdf
3)樹脂添加剤の基礎知識
https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/knowledge_01.html
4)樹脂添加剤の分類
https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/knowledge_02.html
5)添加剤Q&A
https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/faq_01.html
6)第3回 成形性改良剤の選定と評価方法、上手な使い方
https://www.tenkazai.com/additive-101/03.html
7)AN INTRODUCTION TO PLASTICS & TOXIC CHEMICALS
https://ipen.org/sites/default/files/documents/ipen-plastics_booklet-finalspreads.pdf
8)LC/MSによるプラスチック製の乳幼児用品・玩具から溶出する化学物質に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jec/21/3/21_3_245/_pdf
9)Plastic Products Leach Chemicals That Induce In Vitro Toxicity under Realistic Use Conditions
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.1c01103
10) PLASTICS, EDCs & HEALTH
https://www.endocrine.org/-/media/endocrine/files/topics/edc_guide_2020_v1_6chqennew-version.pdf
日本のプラスチック生産量
一般社団法人 プラスチック循環利用協会2021年12月による https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
プラスチックの処理
参考文献
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0200574
一般社団法人 プラスチック循環利用協会2021年12月による https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
プラスチックはほとんどリサイクルできてない!
プラスチックの国内マテリアルリサイクルは全廃プラの5.8%(2021年)
マテリアルリサイクル品の利用先
輸出(プラ屑) | 56万t、31.7% |
輸出(再生原料) | 75万t、42.3% |
国内循環利用(再生製品) | 40万t、22.4% |
国内循環利用(廃PETボトルからの再生繊維) | 7.6万t、3.6% |
全マテリアルリサイクル | 177万t |
(注)プラ屑:(MR目的で)破砕・洗浄等の中間処理を施した廃プラ
再生原料:ペレット、インゴット、フレーク等
再生製品:輸送用パレット、土木建築用資材、日用雑貨等*
(再生製品の輸出量およびプラ屑・再生原料の輸入量は少ないため無視しています。)
*)国内再生製品の内、PETが大部分(PETボトルリサイクル年次報告書2022より
https://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/new.pdf)
上記データは、一般社団法人 プラスチック循環利用協会2021年12月による
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
プラスチックをどうする?
プラスチックは、マイクロプラスチックや有害化学物質により、人間や生態系に影響が懸念されるので、減らしたい。
プラスチックは、 Reduce(リデュース(減らす))、Reuse(リユース(再利用))、Recycle(リサイクル(再生))で減らせるが、前記のようにリサクルはできていないので、①リデュース、②リユースで減らす。
プラスチックを使うのをやめる
↓
でも医療用など今すぐやめられない用途もある
↓
できるところからプラスチックをやめる
↓
まず使い捨てプラスチックをやめる
↓
プラスチック代替品があれば、代替品を使う
↓