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減らそうプラスチックの会

心筋梗塞患者の冠動脈血でマイクロプラスチックを高頻度に検出

冠状動脈

心筋梗塞で治療を受けた患者では、冠動脈の血液中からマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)が、慢性の冠動脈疾患患者や正常な冠動脈を持つ人より高い頻度で検出されたことが報告されました。また、MNPsの検出は炎症の強さやPM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質)への曝露、喫煙と関連していました。ただし、この研究は関連性を示したものであり、MNPsが心筋梗塞の原因であることを証明したものではありません。

目次
  • 心筋梗塞患者では冠動脈の血液からマイクロ・ナノプラスチックが高頻度に検出された。
  • 最も多く検出されたプラスチックはポリエチレンだった。
  • MNPsの検出は炎症マーカーの上昇やPM2.5への曝露、喫煙と関連していた。
  • 多変量解析では喫煙歴のみがMNPs検出の独立した関連因子だった。
  • 横断研究であり、MNPsが心筋梗塞を引き起こしたとは結論できない。

マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は、5mm以下の微小なプラスチックと、さらに小さいナノサイズのプラスチック粒子です。近年、人の血液や臓器からも検出されることが報告され、心血管疾患との関係が注目されています。

一方で、冠動脈そのものを流れる血液中にMNPsがどの程度存在するのか、また心筋梗塞との関連については十分に分かっていませんでした。そこで研究チームは、冠動脈血液を直接調べる研究を行いました。

研究デザインと対象

本研究は、一時点でデータを比較する横断研究です。研究には、冠動脈造影検査を受けた61人が参加しました。

対象者は次の3群に分けられました。

  • ST上昇型心筋梗塞(STEMI):19人
  • 慢性冠症候群(CCS):20人
  • 冠動脈に異常が認められなかった対照群:22人

血液中のマイクロ・ナノプラスチックを測定

研究では、

  • 冠動脈の血液
  • 腕などから採取した末梢血

の両方を採取しました。

MNPsは、プラスチックの種類を分析できる**熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(Pyrolysis-GC/MS)と、赤外線を利用して粒子を調べるレーザー直接赤外分光法(LDIR)**で測定しました。

大気汚染や炎症も評価

さらに、

  • 検査当日のPM2.5曝露
  • 過去2年間のPM2.5曝露
  • 炎症マーカー(インターロイキン6〔IL-6〕、腫瘍壊死因子α〔TNF-α〕)
  • 喫煙歴

も評価しました。

MNPsは心筋梗塞患者で最も高頻度に検出

MNPsは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者で最も高い頻度で検出されました。

  • STEMI:84.2%
  • CCS:40.0%
  • 対照群:31.8%

この差は統計学的に有意でした(P=0.002)。

また、STEMI患者ではMNPsの濃度が高く、検出されたプラスチックの種類も多く、中央値は3種類(四分位範囲2~4種類)でした。

最も多く検出されたのはポリエチレン

検出されたプラスチックの97%はポリエチレンでした。

同じ患者では、末梢血と冠動脈血からほぼ同じ種類のプラスチックが検出されましたが、濃度は冠動脈血の方が有意に高くなっていました(P<0.001)。

炎症やPM2.5への曝露との関連

STEMI患者では炎症マーカーであるIL-6とTNF-αが高値を示しました(P≤0.006)。

PM2.5への曝露量もSTEMI患者で高く(P≤0.012)、PM2.5が15µg/m³を超える人や喫煙者ではMNPsがより高頻度に検出されました(P=0.006)。

喫煙とPM2.5高曝露の両方がある患者では、全員からMNPsが検出されました(P<0.001)。

多変量解析で独立して関連したのは喫煙歴

一方、多変量解析では、喫煙歴のみがMNPs検出と独立して関連していました(オッズ比5.69、95%信頼区間1.33~26.63、P=0.023)。

この研究では、心筋梗塞患者の冠動脈血液には、慢性冠動脈疾患患者や対照群より多くのMNPsが存在することが示されました。

また、MNPsは炎症の強さやPM2.5への曝露、喫煙と同時にみられることが多いことも分かりました。

著者らは、これらの結果は環境中の曝露と冠動脈疾患との関連を示唆するものであると述べています。しかし、この研究だけではMNPsが心筋梗塞を引き起こすとは結論できません。

この研究にはいくつかの限界があります。

  • 横断研究のため因果関係は判断できません。
  • 対象者は61人と少数でした。
  • 単一施設で実施された研究です。
  • MNPsが心筋梗塞の発症に直接関与したかどうかは評価できません。

そのため、今回の結果を一般の人すべてに当てはめるには、より大規模で長期間の研究が必要です。

今回の研究では、心筋梗塞患者の冠動脈血液からマイクロ・ナノプラスチックが高頻度で検出されました。また、MNPsの検出は炎症、大気汚染、喫煙と関連していました。一方で、多変量解析では喫煙歴のみが独立した関連因子でした。この研究は関連性を示したものであり、MNPsが心筋梗塞の原因であることを示した研究ではありません。今後は、より大規模な前向き研究によって因果関係の解明が期待されます。

マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)
微小なプラスチック粒子の総称です。マイクロプラスチックは一般に5mm以下、ナノプラスチックは一般に1μm未満の粒子を指します。

PM2.5
直径2.5マイクロメートル以下の大気中の微粒子です。肺の奥深くまで入り込みやすく、健康への影響が懸念されています。

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)
冠動脈が急に詰まり、心筋への血流が大きく低下する重症の心筋梗塞です。

慢性冠症候群(CCS)
冠動脈の動脈硬化によって慢性的に血流が低下した状態を指します。

Paolisso P, Scisciola L, Belmonte M, ほか.
Micro- and nano-plastics in the coronary circulation and air pollution exposure in ischaemic heart disease presentation.
European Heart Journal. 2026.
DOI: 10.1093/eurheartj/ehag447

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