食品容器から放出されるナノプラスチック 油との接触で毒性が高まり腸障害を引き起こす可能性
フードデリバリーやテイクアウトで使われるプラスチック容器は、食品中にマイクロプラスチックやナノプラスチック(MNPs)を放出する可能性があります。特に油分の多い食品と接触した場合、その健康影響はこれまで十分に評価されていませんでした。
油を入れて電子レンジ加熱するとナノプラスチックが急増
研究チームは、ポリプロピレン(PP)製やポリエチレン(PE)コーティングの食品容器に水または食用油を入れ、電子レンジで3分間加熱しました。
その結果、油を入れた場合にはマイクロプラスチック・ナノプラスチックの放出量が大幅に増加し、最大で1リットル当たり1.52×10¹⁴個(約152兆個)に達しました。これは水の場合の約125倍に相当します。
さらに、プラスチックに含まれる添加剤や重金属も同時に溶け出し、その量は最大309倍まで増加しました。
油由来のナノプラスチックは毒性が4倍高かった
大豆油と接触したポリプロピレン由来のナノプラスチックは、水と接触した場合のナノプラスチックに比べて約4倍強い細胞毒性を示しました。
研究者らは、その理由として、
- 粒子表面が油膜で覆われていたこと
- 粒子表面が正の電荷を帯びていたこと
- 表面の性質が変化していたこと
- 添加剤が一緒に取り込まれていたこと
などを挙げています。
わずか5分で細胞膜に損傷
蛍光顕微鏡と透過型電子顕微鏡による観察では、100µg/mLの濃度でナノプラスチックにさらされた細胞の膜が、わずか5分以内に損傷を受けることが確認されました。
細胞膜は細胞の内部を守る重要な構造であり、その破壊は細胞機能の低下につながります。
マウスの腸で深刻な障害を確認
マウスに油由来のナノプラスチックを2週間にわたり経口投与したところ、腸のバリア機能に深刻な障害が生じました。
また、腸の粘膜免疫の働きにも異常が認められました。腸のバリア機能や免疫機能を保護する処置を行うと、これらの悪影響は一部改善されました。
安全基準との比較
研究チームは、安全性の目安となる基準値も推定しました。
その結果、
- 分子レベルで影響が現れ始める基準値:0.4µg/mL
- 組織の損傷が生じる基準値:15.83mg/kg
と算出されました。
さらに、人の消化管に5年間蓄積すると仮定した推定値や、これまで報告されている人体組織中のマイクロ・ナノプラスチック濃度を比較したところ、分子レベルの安全基準を最大1107倍上回る可能性が示されました。ただし、組織損傷の基準値までは超えていませんでした。
より安全な食品包装への転換が必要
この研究は、油分の多い食品と接触するプラスチック容器から大量のナノプラスチックや添加剤が放出されること、そして油由来のナノプラスチックは通常よりも強い毒性を示すことを明らかにしました。
研究者らは、油と接触する食品用プラスチックの規制強化と、より安全な食品包装材料の開発が急務であると結論づけています。
【注】
- マイクロプラスチック:大きさ5mm以下のプラスチック片。
- ナノプラスチック:さらに小さい1µm(1000分の1mm)未満のプラスチック粒子。
- 腸のバリア機能:有害物質や病原体が体内へ侵入するのを防ぐ働き。
- 細胞毒性:細胞を傷つけたり死滅させたりする性質。
文献
Xie R. ほか(2026)「Oil-Coated Nanoplastics Induce Rapid Membrane Disruption and Severe Intestinal Injury」Advanced Science 13(31): e20935. DOI:10.1002/advs.202520935.
https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202520935

