投稿者: 減らそうプラスチックの会 編集部 2026年8月10日公開
英国から輸出されたプラスチック廃棄物が、トルコの水路をマイクロプラスチックで汚染しています。英ガーディアン紙の調査でわかりました。汚染水は農業用の水路にも流れ込んでいます。専門家は食の安全への影響を心配しています。
この記事のポイント
- トルコ・アダナ市のリサイクル拠点近くの水路で、高濃度のマイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック片)が見つかりました
- この水路は、農作物を育てる灌漑用の水路にも合流しています
- 英国は2025年に67万5,000トンを輸出しました。うち13万9,000トンがトルコ向けです
- 研究者やNGOは、この状況を「廃棄物植民地主義」だと指摘しています
- ただし輸出そのものは合法です。企業が法律を破ったという指摘ではありません
- 日本も先進国として廃棄物を輸出しており、他人事ではないテーマです
今回発表された内容
水路の汚染と研究者の調査
ガーディアン紙は、トルコ・アダナ市の大規模なリサイクル拠点近くを調査しました。近くの水路から、高濃度のマイクロプラスチックが見つかりました。この水路は大雨の後に農地へあふれ、肥沃な農業地帯チュクロヴァ平野の灌漑水路にも合流しています。
調査したのは、サバンジュ大学の海洋生物学者ギュンドードゥ氏です。査読(専門家による事前チェック)を経た学術誌に結果を発表しました。この調査は、環境中のプラスチック粒子を分析したものです。人の健康への影響を直接調べたものではありません。
下流のサンプルは、上流より濃度が10倍高いものでした。検出された破片は「リサイクル処理に特徴的」だと、同氏は述べています。
NGOによるデータ分析
国際NGOのEIAは、2021〜2024年の輸出データを分析しました。英国からトルコへの輸出のうち約13%が、アダナの8施設に送られていました。13社が545件、計5万2,000トンを出荷しています。
これらの企業に違法行為の指摘はありません。英国の輸出業者には、適正なリサイクルを確保する義務があります。つまり今回の問題は密輸ではなく、合法な仕組みの中の構造的な課題です。
なぜ重要なのか(日本への示唆を含む)
ギュンドードゥ氏は、灌漑水路への排水流入が食の安全に関わる懸念を引き起こすと述べています。汚染は地中海にも流れ込み、海洋プラスチック問題を悪化させるとしています。
EIAのヤングマン氏は、英国の輸出依存がEUに「追いついていない」不均衡を生んでいると指摘します。英国内では許されない規模の汚染を、トルコの地域社会に押し付けているというのです。ただし、これは研究者やNGOという立場からの主張です。「濃度が10倍」という測定結果は事実ですが、「不均衡」「押し付け」といった評価は一つの見解として読む必要があります。
日本も先進国として廃棄物を輸出しており、同様の批判の対象になりえます。英国やEUによる輸出規制の強化は、日本の輸出政策や国内リサイクル体制を考える参考になります。ただし規制の枠組みや輸出先の事情は国ごとに異なります。数値をそのまま日本に当てはめることはできません。
今後の課題と見通し
英国は国際的な条約交渉で、有害プラスチックの撤廃を訴えてきました。しかし交渉は昨年決裂し、再開は2027年の見込みです。輸出禁止そのものには、まだ踏み込んでいません。
一方でEUは11月から、主にOECD加盟国以外への輸出を禁止します。トルコはOECD加盟国のため対象外です。そのため、環境団体はトルコへの輸出増加を懸念しています。トルコは経済的には発展途上の面を持ちますが、OECD加盟という分類によって規制の対象から外れているのです。
トルコは2021年、輸出量の94%を占めるポリエチレンの輸入禁止を発表しましたが、業界の圧力で撤回した経緯があります。ギュンドードゥ氏は、輸入禁止やろ過装置の義務化、独立した監視体制を求めています。
英国政府は、既存の規制で対応済みとコメントしています。トルコ政府への取材には応答がありませんでした。
よくある質問
Q. マイクロプラスチックとは何ですか? A. 5mm以下の、とても小さなプラスチックの粒や破片です。大きな製品が砕けてできるものが多くあります。
Q. 英国の企業は法律を破っているのですか? A. いいえ。輸出そのものは合法です。問題は、合法な仕組みの中で起きている構造的な課題です。
まとめ
英国から輸出されたプラスチック廃棄物が、トルコ・アダナの水路を汚染し、農業用の灌漑水路にも影響しています。研究者は食の安全や海洋汚染を懸念し、NGOは輸出依存による不均衡を指摘しています。ただしこれらは、合法な輸出の枠組みの中で起きている問題です。国際条約交渉やEUの規制強化が、今後の輸出構造をどう変えるか注視が必要です。
私たちにできること
プラスチック製品を減らし、自分の出す廃棄物がどう処理されるかに関心を持つことも、大切な一歩です。
用語解説
【マイクロプラスチック】5mm以下のプラスチック片のこと。
【廃棄物植民地主義】豊かな国が規制の緩い国へ廃棄物を輸出し、汚染を押し付ける構造を表す言葉。強い価値判断を含むため、事実と主張を分けて理解する必要があります。
【OECD】経済協力開発機構の略称。主に経済的に発展した国々が加盟する国際機関です。
情報源・参考資料
【報道記事】 ・Karen McVeigh, Ayça Aldatmaz ・「UK plastic ‘waste colonialism’ found to be polluting Turkey’s farming heartland」 ・The Guardian ・2026年8月 ・https://www.theguardian.com/environment/2026/aug/04/uk-plastic-waste-colonialism-recycling-exports-contaminating-water-crops-turkey
【関連情報】
- EIA(Environmental Investigation Agency)による同じ調査を扱った記事:https://eia-international.org/blog/harmful-plastic-waste-from-british-bins-to-turkiyes-farms-and-back-onto-uk-plates/
- 英国政府の廃棄物輸出ガイダンス(GOV.UK):https://www.gov.uk/guidance/importing-and-exporting-waste
本記事は医学的助言を目的としたものではありません。

