投稿者:減らそうプラスチックの会編集部 2026年8月4日公開
EUで、新しい規制が始まります。2026年7月20日に、ビスフェノール規制(規則2024/3190)が施行されます。さらに8月12日には、包装廃棄物規則(PPWR)第5条の化学物質規制も始まります。この2つの規制により、食品の容器や包装に使われるBPA(ビスフェノールA)やPFAS(有機フッ素化合物)の使用が制限されます。事業者は、分析によって規制を守っていることを証明する必要があります。
この記事のポイント
- EUでは2026年7月20日から、規則(EU)2024/3190が適用されます。この規則は、食品と接触する材料でのBPAなどの使用を禁じるものです。
- 2026年8月12日からは、PPWR第5条が適用されます。すべての包装材に、重金属とPFASの含有規制が課されます。
- PFASの基準は、個別の物質で25ppb未満です。合計では250ppb未満、総フッ素量では50ppm未満とされています。
- 事業者には、原材料の確認や化学分析、適合宣言書の発行など、複数の対応が求められます。
- PPWR第39条に基づく完全な適合宣言は、現時点ではまだ発行できません。既存の宣言書に組み込む形での対応が、当面の措置とされています。
今回発表された内容
今回の情報は、Pack-Lab社が自社サイトで公表した解説記事に基づいています。Pack-Lab社は、ギリシャの企業です。包装の分析やコンプライアンス支援を行っています。つまり、この記事は、規制対応を支援する企業の立場からまとめられたものです。
ビスフェノール規制(規則2024/3190)とは
規則(EU)2024/3190は、ビスフェノールA(BPA、CAS番号80-05-7)と、関連する化合物(BPS・BPF・BPBなど)を対象としています。これらの物質を、食品と接触する材料や製品に使うことを禁じる規則です。
この規制は、2026年7月20日から適用が始まります。まず、使い切りタイプの食品接触材料(一度使ったら捨てる容器などの材料)が対象です。その後、2027年と2028年にも、段階的に適用が広がる予定です。
BPAについては、以前から規制がありました。2018年以降、規則(EU)No 10/2011のもとで、0.05mg/kgという上限がすでに設けられていたのです。しかし、今回の2024年規則では、この基準がさらに厳しくなりました。材料の中にビスフェノールを一切含まないことが、新たに求められています。
この背景には、欧州食品安全機関(EFSA)による評価があります。EFSAは2023年に、BPAについて再評価を行いました。その結果、BPAには発がん性があり、人の健康に有害であるとの評価を示しています。
どのように確認するのか
適合の確認は、材料そのものの化学分析によって行われます。ビスフェノールの含有量について、1ppb(材料0.001mg/kg)未満という、非常に厳しい検出限界が求められます。
ただし、金属製の容器など、材料を直接分析することが難しい場合もあります。そのような場合には、代わりに特定移行量試験(食品に溶け出す量を調べる試験)を用いることもできるとされています。
事業者には、いくつかの対応が求められます。まず、原材料の供給元から、ビスフェノールを含まないことを確認する文書を集める必要があります。また、製造の工程自体でも、ビスフェノールを使わないようにしなければなりません。さらに、最終製品について、1ppb以下であることを化学分析で確認します。そのうえで、規則2024/3190への適合を示す宣言書を発行し、サプライチェーンの次の段階へ伝える必要があります。
PPWR第5条の化学物質規制とは
包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU)2025/40)は、2025年2月11日にすでに発効しています。そして、2026年8月12日から、本格的な適用が始まります。
PPWRの規定の多くは、数年かけて段階的に適用されます。しかし、包装全般の化学物質要件を定める第5条だけは、適用開始と同時に効力を持ちます。
第5条第4項では、重金属についての基準が定められています。カドミウム・鉛・水銀・六価クロムという4種類の重金属について、合計の含有量が、包装材料1kgあたり100mgを超えてはならないとされています。
また、食品接触包装では、PFAS(有機フッ素化合物)の使用も禁止されます。PFASとは、水や油をはじく性質を持つ化学物質のグループです。具体的な基準は、次のとおりです。個別のPFAS物質では25ppb未満、個別PFASの合計では250ppb未満とされています。さらに、材料中の総フッ素量(TF)についても、50ppm未満という基準があります。
PFASの検査方法について
PFASの検査には、いくつかの方法があります。現在の市場での実務では、特定の物質を対象とした分析が一般的です。1回のターゲット分析で、およそ50〜100種類の個別PFAS化合物を調べることができるとされています。
もっとも広く使われている手法は、総フッ素量(TF)分析です。これは、まずスクリーニング(ふるい分け)として行われます。
もしTF分析で基準を超えた場合は、次の段階に進みます。総有機フッ素量(TOF)分析という、より詳しい方法です。この方法では、無機フッ素由来の成分を除いて調べます。そのため、PFAS由来の有機フッ素量を、より正確に把握できるとされています。
なお、今後はさらに詳しいガイダンスが示される見込みです。PFAS物質のグループ分けや、分析で確認すべき具体的な物質の定義について、追加の指針が予定されています。
なぜ重要なのか(日本への示唆を含む)
今回の規制強化には、大きな意味があります。EUが、食品接触材料に含まれる化学物質について、これまでよりも厳しい安全基準を設けようとしているからです。
BPAについては、特徴的な変化がありました。従来は、食品に溶け出す量を管理する規制でした。しかし今回は、EFSAによる健康リスクの再評価を踏まえ、使用そのものを禁止する規制へと踏み込んでいます。
また、PFASについても、国際的に懸念が広がっています。なぜなら、PFASは自然界で分解されにくく、体内に蓄積しやすいと考えられているためです。身近な食品包装への規制が強まることは、消費者の健康を守るという点で、意義があると言えます。
日本の読者にとっても、今回の規制は関係があります。EU向けに食品用の容器包装を輸出したり、製造したりしている事業者には、直接の影響があるためです。さらに、EUの規制は、他の地域の規制を検討するときの参考にされることも多くあります。そのため、今後、日本国内での議論にも影響を与える可能性があります。
今後の課題と見通し(注意点・限界を含む)
第39条とDoC発行義務
PPWRには、第39条という規定があります。この条文では、包装が第5条から第12条までの要件を満たしていることを示す、適合宣言(DoC)の発行が義務づけられています。
しかし、2026年8月の時点で効力を持つのは、第5条だけです。そのため、現時点では、第39条に基づく完全な適合宣言を発行することはできません。
暫定的な実務対応
そこで、実務上は次のような対応が想定されています。第5条への適合状況を、既存の食品接触材料に関する適合宣言(規則EC10/2011に基づくものなど)に組み込む形です。これは、当面の暫定的な措置と位置づけられています。とくに、多層・多素材のラミネート材のように、他の条項の要件をまだ満たしていない材料で、この対応が想定されています。
すでに条件を満たしている材料
一方で、すでに条件を満たしている材料もあります。リサイクル適性や、再生材の使用比率に関する目標を満たしている材料です(再生PETトレイなど)。こうした材料については、PPWRに基づく適合宣言を発行し、サプライチェーン内で共有できるとされています。
事業者に求められる今後の対応
今後、事業者には次のような対応が求められます。まず、化学分析を通じて、重金属基準とPFAS規制の両方への適合を確かめることです。そして、第5条への適合を示す宣言書を作成することです。第39条に基づく本格的な枠組みが整うまでは、既存の適合宣言書に統合することも検討されます。すでに第6条・第7条の要件を満たしている材料(再生PET硬質プラスチックなど)については、PPWRに基づく本格的な適合宣言を作成・発行することに意味があるとされています。
2つの規制の共通点
このように、2026年7月と8月には、2つの規制が相次いで施行されます。それぞれ、求められる対応が異なります。ビスフェノール規制は、ppb単位という、ごくわずかな量まで分析で証明することを求めます。一方、PPWR第5条は、すべての包装材を対象に、PFASと重金属の両方への適合を求めます。ただし、両者に共通する点もあります。適合は、書類上の宣言だけでは足りず、実際の化学分析による裏付けが必要という点です。
よくある質問
Q. BPAとは何ですか? A. ビスフェノールAの略称です。プラスチック製品や、缶の内側のコーティングなどに使われてきました。EFSAの2023年の再評価では、発がん性があり、人の健康に有害であるとされています。
Q. PFASとは何ですか? A. 有機フッ素化合物の総称です。水や油をはじく性質があるため、幅広い製品に使われてきました。しかし、自然界で分解されにくいことから、国際的に規制が強まっています。
まとめ
EUでは、2026年7月20日にビスフェノール規制が施行されます。さらに8月12日には、PPWR第5条の化学物質規制も始まります。この2つの規制により、食品接触包装からBPAとPFASを排除する動きが、本格化します。
事業者には、多くの対応が求められます。原材料の確認から、化学分析、適合宣言書の整備まで、幅広い準備が必要です。また、PPWR第39条に基づく完全な適合宣言の枠組みは、まだ整備の途中です。今後も、追加のガイダンスが見込まれます。
食品と接触する容器包装をめぐる規制は、消費者の健康保護に直結するテーマです。今後も、引き続き注目していく必要があります。
私たちにできること
食品用の容器包装を選ぶときには、成分表示や、事業者の情報開示に関心を持ち続けるという選択肢があります。また、こうした規制の動きを知っておくことも、暮らしの中の製品を見直す、一つのきっかけになります。
用語解説
【BPA(ビスフェノールA)】プラスチックや缶の内側のコーティングなどに使われてきた化学物質です。EFSAの再評価で、発がん性が指摘されています。
【PFAS】有機フッ素化合物の総称です。水や油をはじく性質があり、自然界で分解されにくいことから、「残留性汚染物質」として懸念されています。
【PPWR】EUの包装・包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation)です。包装のリサイクル性や、化学物質規制などを定めています。
【ppb・ppm】濃度を表す単位です。ppbは10億分の1、ppmは100万分の1の割合を示します。
【適合宣言書(DoC:Declaration of Compliance)】製品が、特定の規制要件を満たしていることを示す文書です。事業者が発行します。
本記事は医学的助言を目的としたものではありません。
情報源・参考資料
【発表資料】 ・著者/発表元:Pack-Lab(包装分野の分析・コンプライアンス支援企業、ギリシャ) ・記事名:BPA, Metals, PFAS & New DoC in Food Contact Packaging: What Changes in July and August 2026 ・発表元サイト:Pack-Lab公式サイト ・発表年月:2026年 ・URL:https://www.packlab.gr/en/bpa-pfas-metals-ppwr-what-changes-2026/
【関連情報】
・欧州委員会(European Commission)のPPWR公式ページ
Packaging and Packaging Waste Regulation (PPWR) https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/35277381-29a0-11f1-8803-01aa75ed71a1/language-en
・欧州食品安全機関(EFSA)のBPA再評価に関する公式発表ページ
Bisphenol A in food is a health risk https://www.efsa.europa.eu/en/news/bisphenol-food-health-risk
※本記事は上記企業の発表内容をもとに構成しており、原文中の同社の分析サービス等に関する宣伝的な記述は含めていません。

