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減らそうプラスチックの会

南極の土壌からナノプラスチック初検出

南極大陸の氷のない渓谷(ドライバレー)を写した風景写真。荒涼とした岩と土壌が広がり、遠くに雪山が見える。

減らそうプラスチックの会 編集部 2026年8月6日公開


南極の土壌から、とても小さな「ナノプラスチック」が見つかりました。世界で初めての発見です。ナノプラスチックとは、直径1マイクロメートルよりも小さいプラスチックの粒です。発表したのは、英ランカスター大学を中心とする国際研究チームです。2026年7月、査読誌『Scientific Reports』に論文が掲載されました。南極は、地球上でもっとも手つかずの場所とされてきました。しかし今回の発見で、そこにもプラスチック汚染が及んでいることが分かりました。

目次
  • 南極大陸の内陸部「マクマード・ドライバレー」の土壌から、ナノプラスチックが初めて見つかりました。
  • 調べた表土13地点のうち、54%で検出されました。
  • 濃度は最大で1グラムあたり295ナノグラムでした。
  • ポリプロピレンやポリエチレンなど、複数の種類のプラスチックが確認されました。
  • どこから来たのかは、まだ特定されていません。
  • 生態系への影響は、今後の研究課題です。

今回の研究は、環境調査にあたります。調べたのは、南極大陸の中でも特に乾燥し、氷のない地域です。「マクマード・ドライバレー」と呼ばれています。研究チームは、2023年1月8日から28日にかけて、この場所の土壌を採取しました。研究には、ランカスター大学のほか、ノルウェー大気研究所やイタリア国立地球物理学火山学研究所など、複数の国の機関が参加しています。

検出されたプラスチックの内容

分析したのは、表土13地点と、深さ20センチより深い土壌4地点です。まず、表土を見てみましょう。13地点のうち、54%でナノプラスチックが検出されました。濃度は、1グラムあたり中央値で26.6ナノグラムでした。最大では295ナノグラムに達しました。一方、深層の土壌でも、4地点のうち50%で検出されました。ただし、濃度は表土よりも低くなっています。中央値は、1グラムあたり1.95ナノグラムでした。

見つかったプラスチックの種類は、いくつかあります。ポリプロピレン、ポリエチレン、PET(ペットボトルなどに使われる素材)です。さらに、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、タイヤの摩耗で生じる粒子も確認されました。今回の検出には、新しい分析技術が使われました。「熱脱着-プロトン移動反応質量分析法」という、感度の高い方法です。この技術のおかげで、これまで見つけにくかった小さな粒子も、捉えられるようになりました。

発生源はまだ特定されていない

では、このプラスチックはどこから来たのでしょうか。研究チームは、大気の動きを計算するモデル「FLEXPART」を使って調べました。その結果、2つの可能性が示されました。1つは、南極大陸内にある研究基地など、近くの発生源です。もう1つは、大気を通じた長い距離からの輸送です。ただし、これはあくまでモデルによる推定です。どちらがどれくらい影響しているかは、まだ分かっていません。

論文の責任著者の一人、クリスピン・ハルソール教授(ランカスター大学)も、この点に触れています。とても小さな粒子が、遠くから直接運ばれてきたのか。それとも、南極沿岸の海にある大きなプラスチックごみが、風化して細かくなったのか。現時点では、どちらとも言えないとしています。

これまで、南極の海では、大きなプラスチック片やマイクロプラスチックが見つかっていました。一方で、土壌についての研究は、あまり進んでいませんでした。今回の発見は、人がほとんど立ち入らない内陸の土壌にも、プラスチック汚染が及んでいることを示しています。つまり、プラスチック汚染が地球規模で広がっている、という証拠の一つといえます。

研究チームによると、今回得られた数値は、今後の重要な基準になるとしています。世界のプラスチック汚染を調べる際の、比較のもとになるデータということです。もちろん、日本に直接影響する内容ではありません。しかし、身の回りのプラスチックの使い方やごみの管理を考えるうえで、参考になる知見といえるでしょう。

研究チームは、南極の生態系について、ある懸念を示しています。無脊椎動物は、代謝や成長のスピードが遅いという特徴があります。そのため、化学的なストレスに弱い可能性がある、としています。ただし、これはあくまで研究者による懸念です。今回の研究自体は、生態系への実際の影響を測定したものではありません。

また、調査した地点の数にも注意が必要です。表土は13地点、深層土壌は4地点にとどまります。そのため、南極大陸全体を代表する結果とは言い切れません。今後は、発生源や生態系への影響について、さらなる研究が必要です。加えて、国際的な連携によるプラスチックの排出削減や、南極での廃棄物管理の強化も、課題として挙げられています。

Q. ナノプラスチックとマイクロプラスチックは、何が違うのですか? A. マイクロプラスチックは、一般的に5ミリメートル以下のプラスチック片を指します。一方、ナノプラスチックは、さらに小さな粒子です。直径1マイクロメートル、つまり1000分の1ミリメートルよりも小さいものを指します。

Q. 南極でプラスチックが見つかったのは、今回が初めてですか? A. いいえ、そうではありません。これまでも、南極の海では、大きなプラスチック片やマイクロプラスチックが確認されていました。今回新しいのは、内陸の土壌からナノプラスチックが見つかった点です。

南極大陸の内陸部の土壌から、ナノプラスチックが世界で初めて検出されました。表土13地点のうち、54%で検出され、複数の種類のプラスチックが確認されています。発生源は、まだ特定されていません。近くの発生源と、長距離の大気輸送、その両方が関わっている可能性があります。生態系への影響は、今後の研究課題です。今回の結果は、地球規模のプラスチック汚染を調べるための、重要な基準になると期待されています。

なぜ、南極のような遠い場所にまでプラスチックが届いてしまうのでしょうか。その背景には、私たちの日々の暮らしの中で使われ、捨てられるプラスチックがあります。だからこそ、使い捨てプラスチックを減らすことが大切です。リユースやリフィルを選ぶことも、一つの方法です。こうした身近な行動が、汚染の広がりを抑える一助になる、という選択肢があります。

【ナノプラスチック】直径1マイクロメートルより小さい、とても小さなプラスチックの粒。

【マイクロプラスチック】5ミリメートル以下のプラスチック片。

【FLEXPART】大気中の物質が、どう運ばれ広がるかを計算するシミュレーションモデル。

【査読論文】 ・Le, Q. N. P., Evangeliou, N., Halsall, C. et al. ・First evidence of nanoplastics in Antarctica soil ・Scientific Reports ・2026年7月 ・DOI: 10.1038/s41598-026-60433-w

【発表資料】 ・ランカスター大学 ・Nanoplastics found in Antarctic soils for the first time ・ランカスター大学ニュースリリース ・2026年7月 ・URL:https://www.lancaster.ac.uk/sci-tech/about-us/news/nanoplastics-found-in-antarctic-soils-for-the-first-time

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