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減らそうプラスチックの会

タイヤ摩耗由来のマイクロプラスチック規制、国連が新基準を採択で前進

投稿者:減らそうプラスチックの会 編集部 2026年8月1日公開


車は、加速したり、カーブを曲がったりします。信号で止まることもあります。そのたびに、タイヤはゴムやプラスチックの小さな破片を道路に残します。この破片は、やがて川に流れ込みます。また、大気中にも舞い上がります。そうして、マイクロプラスチック汚染の一因となっています。こうしたなか、2026年6月に大きな動きがありました。国連欧州経済委員会(UNECE)の会合で、大きな決定がなされたのです。乗用車用タイヤ(C1タイヤ)の摩耗量を制限する、国際基準が採択されました。これは、長年停滞していたEUの関連規制を動かすきっかけとして注目されています。

目次
  • 2026年6月、UNECEの車両規制国際調和世界フォーラム(WP.29)が動きました。乗用車用タイヤ(C1タイヤ)の摩耗限度について、国際基準を採択したのです。
  • 2028年6月30日から、新しいルールが始まります。この基準を適用する国で販売される新車用タイヤは、基準を満たしていることを証明しなければなりません。証明には、走行試験または実験室試験を使います。
  • UNECEの試算によると、今回の基準には大きな効果が期待されています。タイヤの摩耗量全体を、10%を超えて減らせる可能性があるのです。さらに、欧州と日本で流通する高摩耗タイヤのうち、約30%が低摩耗タイヤに置き換わる見込みとされています。
  • この国際基準は、EUが2024年に採択した独自の排出規制「ユーロ7」と関わっています。ユーロ7の運用を後押しする位置づけとなっているのです。
  • 基準をEU域外でどう適用するかは、各国の判断に委ねられています。つまり、自動的に世界共通のルールになるわけではありません。

米国の公益信託系NGOに、ピュー・チャリタブル・トラスツ(The Pew Charitable Trusts)という団体があります。この団体は、プラスチック汚染の防止に関する分析記事を発表しました。記事の中では、2026年6月にUNECEのWP.29が採択した基準について解説しています。対象は、乗用車用タイヤ(C1タイヤ)です。C1タイヤとは、乗用車や小型SUV向けの標準的なタイヤを指します。同団体は、この基準の採択について、独自の評価を述べています。「技術的な一歩にとどまらず、政治的・環境的な転換点である」というものです。ただし、これはあくまで同団体としての見解です。事実そのものではない点に、注意が必要です。

基準の内容と適用時期

UNECEが採択した基準の内容を見てみましょう。2028年6月30日以降、この基準を適用する国では、新車用タイヤの販売にルールが加わります。メーカーは、摩耗限度に適合していることを証明しなければなりません。証明の方法は、走行試験または実験室試験です。なお、この初期基準は2032年まで適用されます。そして、翌2033年からは、さらに厳しい基準が導入される予定です。また、UNECEは今回の基準の効果についても試算を示しています。タイヤ摩耗量全体を、10%を超えて削減できる可能性があるとのことです。さらに、欧州と日本で流通している高摩耗タイヤのうち、約30%が摩耗の少ないタイヤに置き換わる見通しだとしています。

背景にある政策の変化

これまで、車両からの汚染対策といえば、主に排気ガス対策でした。エンジンの改良が進みました。燃料の性能も高まりました。さらに、電動化も進みました。こうした変化により、排気管からの排出は減少してきています。一方で、別の問題が注目され始めています。タイヤやブレーキの摩耗によって生じる粒子です。この粒子は、マイクロプラスチックや粒子状大気汚染の主な発生源のひとつとして、近年関心が高まっています。今回の国際基準は、こうした流れの中で採択されました。規制当局や研究者、NGO、業界関係者が、長年にわたり技術面・政策面での検討を重ねてきた成果だといえます。

EUのユーロ7規制との関係

EUについても見てみましょう。今回のWP.29のC1タイヤ摩耗基準は、2024年に採択された「ユーロ7」排出基準の実施につながるとされています。ユーロ7は、タイヤからのマイクロプラスチック放出を制限する仕組みです。しかも、世界で初めての法的な枠組みとされています。ピュー・チャリタブル・トラスツによれば、EUの規制にはこれまで理由がありました。より広い国際合意の成立を待つかたちで、実施が保留されていたのです。

タイヤの摩耗によるマイクロプラスチックには、大きな特徴があります。EU域内で発生するマイクロプラスチックの中で、発生源として2番目に大きいと報告されているのです。これまで、車両の環境対策といえば排気ガスが中心でした。しかし、今回の基準は違います。タイヤという新たな発生源に、国際的な規制の枠組みが初めて設けられたことを意味します。また、注目したい点があります。UNECEの試算では、低摩耗タイヤへの置き換えが見込まれる地域として、欧州とあわせて日本も挙げられているのです。つまり、タイヤの摩耗による環境負荷は、日本国内で使用される車両にも関わる可能性がある課題だといえます。

今回採択された基準が、どこまで効果を発揮するでしょうか。それは、いくつかの要素にかかっています。ピュー・チャリタブル・トラスツは、ユーロ7の環境面での実際の効果について、次のように指摘しています。まず、高摩耗タイヤが市場からどれだけ早く姿を消すかです。次に、規制がどれだけ実効性をもって運用されるかです。そして、基準が将来的にどこまで厳格化されるかも重要だとしています。また、別の動きもあります。UNECEは2026年から2028年にかけて、トラックやバスなど、より重い車両向けタイヤの基準についても検討を続ける予定です。加えて、注意したい点もあります。今回のC1タイヤ基準は、EU域外では自動的に適用されるものではありません。各国が、自国の基準の基礎として採用するかどうかにかかっているのです。なお、EUのユーロ7は、他国が同様の制度を検討するうえでの参考事例になる可能性があるとされています。

Q. C1タイヤとは何ですか? A. 乗用車や小型SUVなど、一般的な乗用車向けに使われる標準的なタイヤの区分を指します。

Q. マイクロプラスチックとは何ですか? A. 一般的に5ミリメートル以下の微小なプラスチック片を指す言葉です。タイヤの摩耗のほか、さまざまな発生源から生じることが報告されています。

2026年6月、UNECEは乗用車用タイヤ(C1タイヤ)の摩耗限度に関する国際基準を採択しました。2028年6月30日からは、対象国で販売される新車用タイヤに、この基準への適合が求められます。この基準は、EUが2024年に採択した「ユーロ7」規制の運用を後押しするものと位置づけられています。もっとも、基準の効果は、今後の運用や国際的な広がり方次第です。つまり、今回の採択は、タイヤ由来のマイクロプラスチック対策の到達点ではありません。あくまで、ひとつの節目だといえます。

タイヤの摩耗を減らす製品を選ぶことも、一つの選択肢です。また、急発進や急ブレーキを控えた運転を心がけることも、タイヤ摩耗によるマイクロプラスチックの発生を抑える方法として挙げられます。

【マイクロプラスチック】5ミリメートル以下の微小なプラスチック片のこと。

【C1タイヤ】乗用車や小型SUV向けの標準的なタイヤの区分。

【UNECE/WP.29】国連欧州経済委員会(UNECE)の下にある車両規制国際調和世界フォーラムのこと。欧州だけでなく、グローバルな各国の車両基準の国際的な調和を担う。

【ユーロ7】EUが2024年に採択した車両排出基準。タイヤからのマイクロプラスチック放出を制限する枠組みを含む、世界初の法的規制とされている。

【発表資料】

・Selene Álvarez Peña「The Long Road to a Tyre Wear Policy Breakthrough」The Pew Charitable Trusts、2026年7月  https://www.pew.org/es/research-and-analysis/articles/2026/07/07/the-long-road-to-a-tyre-wear-policy-breakthrough

【関連公的資料】

・国連欧州経済委員会(UNECE)プレスリリース、2026年  https://unece.org/media/press/412239

・欧州連合の刊行物(マイクロプラスチックの発生源に関する報告)  https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/048dd075-6e47-11ee-9220-01aa75ed71a1

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