投稿者:減らそうプラスチックの会 編集部 2026年9月29日公開
オランダの105世帯を対象にした研究で、すべての家庭のホコリから微小・ナノサイズのプラスチック(マイクロ・ナノプラスチック、MNPs)が検出されました。世帯の人数や季節などとの関連も示されました。ただし、この研究は健康への影響そのものは調べていません。
この記事のポイント
- オランダの105世帯の家庭のホコリを調べたところ、すべての試料からマイクロ・ナノプラスチックが検出されました。
- 最も多く検出されたのは、ペットボトルなどに使われるPET(ポリエチレンテレフタレート)でした。
- 世帯の人数が多いほど、また一人あたりの居住スペースが狭いほど、検出量が多い傾向がみられました。
- この研究は健康への影響そのものを調べたものではありません。
研究の背景:家庭内マイクロプラスチックの実態調査
人は1日の約9割を屋内で過ごすとされています。しかし、吸い込むことによるマイクロ・ナノプラスチックへの曝露は、まだよく分かっていません。これまで家庭のホコリを調べた研究は、豪州(32世帯)と英国(20世帯)の2件のみでした。また、いずれも粒子の形や色をもとに判定する光学的な手法が中心で、精度に限界がありました。そこで研究チームは、より詳しい実態把握を目指しました。
研究の方法:ガラス皿での採取と化学分析
対象は、オランダに住む18〜45歳の女性105人です。各家庭のリビングに、高さ約1.2mの位置でガラス皿を設置しました。約28日間ホコリを集める作業を、3か月間隔で2回実施しました。採取したホコリは、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(Py-GC/MS)という化学分析手法で調べられました。この手法は、粒子の質量をもとに9種類のプラスチックの種類を特定できます。あわせて、世帯構成や生活習慣に関する質問票も実施されました。
主な結果:全世帯からプラスチックを検出
家庭のホコリからの検出結果
調査した全世帯のホコリから、マイクロ・ナノプラスチックが検出されました。目標とした9種類のうち、7種類が確認されました。最も多く検出されたのはPET(ポリエチレンテレフタレート)で、99.5%の試料に含まれていました。PETは、検出された総量の約8割を占めていました。次いでPS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)の順で多く検出されました。全体の平均検出量は、1平方メートルあたり1日に約35マイクログラムでした。
検出量と関連していた要因
いくつかの世帯の特徴が、検出量と関連していました。世帯の人数が多い家庭ほど、検出量が多い傾向がみられました。一方、一人あたりの居住スペースが広い家庭ほど、検出量は少ない傾向でした。また、秋や冬は夏より検出量が多い傾向でした。カーテンがある家庭では特定の種類(PP)が、掃除機を使う頻度が高い家庭では別の種類(PC、ポリカーボネート)が、それぞれ多く検出される関連がみられました。ただし、これらの要因を組み合わせても、検出量のばらつきの最大46%しか説明できませんでした。そのため、多くの発生源は、まだ解明されていません。
この研究が示したこと:手法と規模の点で新しい知見
この研究は、家庭のホコリを対象に、質量ベースの化学分析(Py-GC/MS)を使った初めての大規模な調査です。従来の光学的手法よりも精度が高く、より正確にプラスチックの種類と量を特定できます。また、複数の要因を同時に検討する統計手法を用いた点も、この分野では初めての試みとされています。研究チームは、屋外の交通関連汚染との関連が見られなかったことから、家庭内の要因がホコリ中のプラスチックの主な発生源である可能性を指摘しています。
この研究の信頼性:査読誌に掲載、資金源は公的機関
この研究は、査読を経て学術誌「Journal of Hazardous Materials Advances」に掲載されました。対象は、オランダに住む18〜45歳の女性105人です。特定の年齢層・性別・地域に限定されているため、結果をそのまま他の集団に当てはめることには注意が必要です。また、研究チームによると、参加者は高学歴の人が多く、一般的な集団よりも偏りがある可能性があります。資金提供は、欧州連合(EU)の公的研究プログラムによるものでした。論文には、プラスチック業界や環境団体からの資金提供、および著者の利益相反(研究結果に影響しうる利害関係)は「ない」と記載されています。
研究の限界:健康影響は調べられていない
研究チームは、いくつかの限界を挙げています。今回の分析手法は、プラスチックの「質量」を測るものであり、粒子の大きさや形、個数は分かりません。そのため、吸い込みやすい微小な粒子がどの程度含まれるかは不明です。また、同じ世帯でも3か月後の再測定では、検出量にばらつきがみられました。さらに、この研究は健康への影響そのものを調べたものではありません。検出されたことと、健康リスクがあることは、別の問題です。
まとめ:身近な発生源への理解が深まる調査結果
オランダの105世帯を調べたこの研究では、すべての家庭のホコリからマイクロ・ナノプラスチックが検出されました。世帯人数や季節など、生活に身近な要因との関連も示されました。ただし、発生源の多くは未解明のままです。健康への影響については、今後の研究が必要とされています。
用語解説
- マイクロ・ナノプラスチック(MNPs):目に見えないほど小さなプラスチック粒子の総称。5mm以下のものをマイクロプラスチック、1µm(1000分の1mm)未満のものをナノプラスチックと呼びます。
- Py-GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析):試料を高温で分解し、発生したガスの成分から元の物質の種類と量を特定する化学分析手法。プラスチックの質量ベースの定量に用いられます。
- PET/PP/PS/PC:いずれもプラスチックの種類の略称です。PET(ポリエチレンテレフタレート)はペットボトルなどに、PP(ポリプロピレン)は食品容器などに、PS(ポリスチレン)は発泡スチロールなどに、PC(ポリカーボネート)は眼鏡レンズなどに使われています。
論文情報・文献
タイトル:Determinants and potential sources of micro- and nanoplastics in settled household dust: A repeated sampling study 著者:Amanda Durkin, Barbara M. Scholz-Böttcher, Lisa Charlotte Balding, Bente van Santbrink, Virissa Lenters, Runyu Zou, Ulrike Gehring, Roel Vermeulen 掲載誌:Journal of Hazardous Materials Advances 発表年:2026年 DOI:https://doi.org/10.1016/j.hazadv.2026.101535
関連情報
WHO「Dietary and inhalation exposure to nano- and microplastic particles」報告書 https://www.who.int/publications/i/item/9789240054608
編集部コメント(減らそうプラスチックの会)
この研究は、家庭のホコリを質量ベースの手法で調べた点で貴重な基礎データです。一方、健康影響は調べられていない点に注意が必要です。「検出された=危険」と誤解しないよう、今後の関連研究の進展を注視していきます。

